覇道の鷲 毛利元就

覇道の鷲 毛利元就 (新潮文庫)

覇道の鷲 毛利元就 (新潮文庫)

フリマで「ご自由にお持ち下さい」となっていたので持ってきた本。「稀代の謀将」と呼ばれた毛利元就の生誕から最期までが描かれている。


文章は明快で表現は淡々としており、「謀将」というおどろおどろしい代名詞から連想するような感覚を受けることはない。それだけに「とりあえずビール」みたいなノリで、不穏な動きを見せる家臣を一族郎党まで誅伐しているように感じられて何とも違和感があった。しかもそれは一回だけでなく何度も繰り返されるのだ。憎しみや憤りといった感情によってではなく、毛利家を大きくしていくために理性的に考慮した結果の行為なのだから、変にドラマチックに描く必要はないと言われればそうなのかもしれないが、北方謙三氏他のエンタテイメント性溢れる文章に馴れてしまうと、もう少しけれん味があっても良いのでは…などと思ってしまうのだ。


弱小であった毛利家を中国十カ国を支配するまでに大きくした元就。一方で、時の流れを見定め「天下を競望せず」を後継者達への遺訓として残す。出来ることと出来ないことの見分けが付かない者は愚かである。事実、元就の孫である輝元は出来ないことを出来ると思ったあげく、中国十カ国百二十万石を防長二国(三十七万石)まで減らしてしまう。


血湧き肉躍るような内容ではありませんが、毛利元就の生涯を辿る本としては良いと思います。