平和はいかに失われたか
- 作者: ジョン・ヴァン・アントワープマクマリー,アーサーウォルドロン,John Van Antwerp MacMurray,Arthur Waldron,北岡伸一,衣川宏
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 1997/09/01
- メディア: 単行本
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戦前の極東における軍事的緊張を高め爆発させたのは、ひとえに日本軍だけの責任であるという評価が戦後の今となっては一般的だろう。しかし、マクマリーはアジアでの国際協力を達成すべく行われたワシントン会議における諸条約を無視した中国と、それに迎合した米国こそが日本の武力行使を招いたと断じている。
日本はワシントン条約によって最大の譲歩をさせられ(戦艦保有比率米英各5に対して3・日英同盟破棄・山東還付)、それでもなお最も条約を尊重する国だった。しかし、中国が条約を無視し、米国が日本他の条約加盟国の言い分に耳を傾けず中国に迎合しつづけた事によって日本の権益が損なわれ、それによって国際協調路線をとる幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)外相の日本国内における立場が弱まり、強硬外交派の跳梁を許すことになったのだ。
最近も、なんとかフセインなんとかとか言う大統領は厨獄の指導者を国賓待遇で迎え会談したそうだが、人権問題も軍事問題も一切棚上げ、唯一合意したのは経済協力だけというお寒い状況である。第二次世界大戦前の愚かな首脳陣に通じるものを感じてしまう。
米国は、戦前の中国に媚びた結果、中国に権益を得るどころか巨大な共産主義国家を誕生させてしまうと言う外交的大失敗を演じた。その悪影響は二十一世紀の現在もなお極東アジアに暗い影を落としている。米国はまた同じ過ちを繰り返すのか。そしてその時、日本は再び期せずして立ち上がらなければならないのか。
人はまた同じ過ちを繰り返すのか。