原発に頼らない社会へ

自然エネルギーを始めとする各種エネルギーを有効活用すれば、原発は必要無いと説く本。もともとは、「ヤマダ電機で電気自動車(クルマ)を買おう」というタイトルで出版されていた本に、原発事故を受けて大幅加筆修正して出版したのが本書である。


地球温暖化クラスター爆弾など、左巻きの人達にありがちな記述もあって「?」なところもあるが、その他の点ではおおむね納得のいく記述がされている。原発に関して述べられている数々の問題点を読めば、日本で原発は元々無理があったと言わざるをえない。原子力賠償制度の再保険を、イギリスのロイズが言下に断ったとか。「地震の多い日本で原子力発電所を動かすのは無理」という理由である。そこでどうしたかというと、何と「地震による損害を免責にした」のである。原発関係者の意識の低さには呆れるとしかいいようがない。


原発推進派は「それなら足りないエネルギーはどうするんだ?」と吠えるに違いないが、それに対する回答も、本書におおむね用意されている。”おおむね”と言ったのは、なんというか、計算式が単純化されすぎていて「そんな計算で大丈夫か?」と少し思わされてしまうのだ。それでも、嘘八百を並べ立てる原発安全信者よりはよほど信用できるのだが。


原発問題を始めとする現代社会のゆがみは、恐竜化した大企業にあるとする点には一部同意(役人の責任もそうとう大きいと思うが、本書ではとくに述べられていない)。税制や各種規制などで「小さい企業が大きくなるように、大きな企業が大きくなりすぎないように」することこそ、国や国民生活を豊かにする方法だと思っているが、実際にはえてして巨大企業に都合がよくなることが多い。マスコミの実態とは、報道機関ではなく広告宣伝業者であるという認識は忘れてはならない。そのマスコミによって「原発安全神話」も形作られてきた。


エネルギー問題だが、スマートグリッドとそれを実現する数々の技術(NAS電池、スーパーキャパシタSCiB)が取り上げられている。これらのいずれもが日本の企業によって開発されたのだとか。ただし、これらが普及すると大規模な発電所が必要無くなり、ひいては各電力会社の存在意義に関わってくるので妨害されていると。


また、電力ピーク時における消費電力の9割は企業が使用しており、一般家庭に省エネを呼びかけるのはナンセンスである。電力ピークを抑えれば大規模な発電所が不要になり、それには企業に省エネを求めるべきである。


電気自動車に関して、航続距離が短くても、一般人の1日の走行距離は平均40km〜50kmだから大丈夫…かなぁ。ドライブが趣味の人はどうすればよいのか?究極の電気自動車「エリーカ」を買えばよい。ポルシェを上回る加速性能、最高時速は400km/h、航続距離は300km(スペックは本書から)。3,000万円で発売予定とのこと。


そして、発電と送電の分離。送電はいわば道路のようなものであり、本来一企業が独占して良いものではない。原発災害によって負った賠償責任を、送電網で償うというアイデアは悪くない。


とにかくいっぱい提言があって全部を書ききれない。中には夢が拡がりすぎじゃないか?と思わされるような内容もあるが、現状維持のまま原発を再稼働して、もう一回どっか〜ん!とやるよりははるかに良いだろう。


一人でも多くの人が本書を読んで、原発が絶対必要であるという幻想を解消して欲しい。原発に頼らない道はきっとどこかにある、そんなふうに思わせてくれる本です。