楊令伝十一 傾暉の章

楊令伝 11 傾暉の章 (集英社文庫)

楊令伝 11 傾暉の章 (集英社文庫)

隆徳府に拠る岳飛増税した事で領内から反抗する村や荘(大きな村)が増え、手を焼いている。部下からの「村か荘をひとつ殲滅させて恐怖感を植えつける」という提案に難色を示す岳飛。崔如のもとを訪れ、部下の提案をふと相談してしまう。崔如は、彼女が作った売り物の紙細工を銭を払わずに持って行こうとした男と、その男に飛びかかり殴られた自分の息子の話をして、秩序とはなにか、民を守るとはなにか、民の安寧とはなにかを岳飛に伝えようとする。


梁山泊より遂に出立する商隊。この商隊が無事交易を成功させられるか否かが、梁山泊の行く末を左右する。楊令自らが黒騎兵を率いて商隊の警護に当たる。


他方、遂に李富と韓世忠が手を結ぶ。今までは裏の戦闘組織しか持たなかった青蓮寺が、表の軍隊を手に入れた瞬間でもある。自らの考える国家を造り上げようとする李富と、楊令の小さく纏まった梁山泊に失望と嫌悪を抱く韓世忠。何時の日か梁山泊、そして楊令の前に大きく立ちはだかる存在となるのだろうか。


西へ向かう商隊。途中で耶律大石と出会い、国の在り方について語る楊令。帝の存在しない国…梁山泊が新しいかたちの国として成立するためには、期せずして王となってしまうかもしれない耶律大石の国と、共存共栄していかなければならない。


金軍は中原に侵攻していくが、南宋の帝である趙構を討つことは出来ないでいる。そんな中、金軍の将軍として出撃していた、金国の先帝である阿骨打(アクダ)の庶長子である斡本(オベン)が金国に帰還すると言い出す。唐昇率いる軍を警護に付けて帰還しようとする斡本だが、岳飛率いる岳家軍に襲われて敗退してしまう。改めて、蕭珪材が警護について斡本を金国に送ろうとする。再び出てくる岳飛岳飛対蕭珪材という、ある意味ドリームマッチが開戦するが、その結果は…


無事帰還した初の商隊は、梁山泊に大きな益をもたらした。そして秦明将軍の息子、秦容が遂に梁山泊に合流する。楊令や史進にも一目置かせる武術の腕を持つ秦容。これから軍の指揮者として頭角を現してくるのだろうか。


騎馬隊に与える馬の数が少ないことに悩む岳家軍が一計を案じる。何と、梁山泊の牧から馬を奪おうというのだ。計略が嵌り、馬を奪う事に成功する岳家軍だが、当然梁山泊軍との戦闘になり…


久しぶりに梁山泊軍の戦闘場面などもあった十一巻。梁山泊の運営もそれなりに順調な一方、永遠の宿敵たる青蓮寺もますますその陰謀を進めようとしている。金国、岳家軍、その他の勢力などもあり、行く先はまだ見えない。


第十二巻は5月18日発売予定。楽しみである。