グローバル恐慌の真相

グローバル恐慌の真相 (集英社新書)

グローバル恐慌の真相 (集英社新書)

中野剛志氏と柴山桂太氏による、対談形式で書かれた著作。グローバル化された経済の危うさを存分に語っている。


今日の経済危機を招いたグローバル化。そもそも、世界経済がグローバル化したのは最近の話ではない。かつて、十九世紀後半から二十世紀前半にかけて、貿易や労働力の移動は現在に匹敵するものであった。この第一次グローバル化時代は、第一次世界大戦によって終焉を迎える…


言い換えれば、「グローバル化の行く末は戦争である」と言うことも出来る。グローバル化が経済による「国家間の争い」なら、それがやがて武力による「国家間の争い」に発展するのは別に不思議な事ではない。そして、いざ戦争になったら、専守防衛の思想に基づき歪な姿となっている我が国の自衛隊では、国家間の争いを戦いきることが出来ない。先の中国における反日デモにおいて、日本国は日本の企業を守ることが出来なかった。そんな国がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などという、グローバル化を極限まで推し進める協定に参加するなど愚の極みである。


そして、経済格差が拡大して中間層が喪失される事の危険も説かれている。貧富の差が少なく、分厚い中間層が生産と消費を行うことによって国力を蓄えてきた日本。しかし、ここ近年、貧富の差が拡大傾向にある。富の再分配機能をきちんと作用させなければ、GDP3位に転落どころの騒ぎではなく、発展途上国への転落すら有り得るのだ。リストラという名目の首切りは、中間層を貧困層へ叩き落とす愚かな所行である。人減らしを行った経営者は、自らの無能を恥じて退任すべきである。


中国に期待する向きもあるが、日本以上のペースで進行する高齢化、沿岸部と内陸部の経済格差、低い民度、不十分な法整備…。共産党による締め付けがなければ、すぐにも瓦解しそうな国に何を期待するのか。先日の反日デモチャイナリスクを充分に実感したのでは無いのか。


かの毛沢東は「中国は経済発展を急いではならない、海沿いの発展を優先してはならない」と言っていたのだとか。地域間の格差が広がり、国が不安定になるからだと。しかし、現在の中国は”近代国家並みに発展した沿岸部”と”日本の明治時代における農村のような内陸部”を同時に内包する状態になってしまっている。こんな状態で言論の自由や民主主義が発展すれば、国家分裂の危機が訪れる。どんな馬鹿がそんな国に投資をすると言うのか。


他にもいろいろな視点から、安易にグローバル化を推し進める事の危険が説かれています。是非ご一読を。