謀略航路

謀略航路 (講談社文庫)

謀略航路 (講談社文庫)

シリア共和国空軍中佐、ラシール・アジャフは、「重要な任務」のためMig29戦闘機を飛ばしていた。「重要な任務」とは、領空侵犯をおかしているボーイング737旅客機を空中で補足し、強制着陸させるというものだった。そのボーイング737には、激化するシリア内戦を和平調停に導くべく活動している民間団体のメンバーが搭乗していた…


鳴海章氏による航空軍事サスペンス。
強制着陸させられたボーイング737副操縦士をしていた元航空自衛隊の戦闘機パイロット、シリア共和国空軍中佐のアジャフ、シリア内戦の調停を目指すという建前の志は崇高だがどこか胡散臭い民間団体の女、シリアの少年兵、そしてボーイング737の奪還を依頼されたもう一人の元空自の戦闘機パイロット。
あるものは目の前の危機に立ち向かい、あるものは策謀をめぐらし、またあるものは時代の流れに翻弄されていく。


アラブの春によって平穏な日々を奪われたシリア国民の悲哀が、シリアの少年兵の目を通して描かれている。そして、鳴海章氏大好きなF-4ファントムがまさかの大活躍!この期に及んでF-4おじいちゃんを出すなんて、本当に好きなんですね。


マルス・ブルー」に登場していた戦闘機パイロット達が「戦闘機パイロット」で有り続けることに拘っていたのに対し、こちらに登場してくる元空自のパイロット達はすでに戦闘機パイロットでは無いこともあって、空を飛べればよいとあっけらかんとしたものである。
そりゃそうだ。「○○でなければ生きていけない」と言っていられるほど人生は短くないのだから。


鳴海章氏の作品が好きなら、まあ読んでおいて損はないです。