TPPが日本を壊す

TPPが日本を壊す (扶桑社新書)

TPPが日本を壊す (扶桑社新書)

紹介しておいてなんだが、ぶっちゃけこの本を読まなくたって、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が日本にとってデメリットの方が大きい協定であることなんぞ明白なのだ。
ラクフセインオバマ大統領は「TTPによって米国の輸出額を増やす」と明言しており、そうなれば買い手はGDPの規模から言って日本しか有り得ない。TPPによって日本からの輸出が増えるなどと夢想するのはよっぽどの大馬鹿であり、真顔でそんな事を言っている奴がいたら指を差して笑ってやるがよい。
巷の風評と異なり、日本のGDPにおける輸出依存率は20%未満。絶対的に見ると、日本は輸出大国ではなく内需大国なのだ。TPP参加はその内需をみすみす外国に提供するバカ政策である。


この本では、TPPへの参加表明が菅前総理のスタンドプレイに過ぎないこと、TPPの内容自体がきちんと日本で理解されていないこと(条文の全訳すら存在していない!)、メリットがあるのはグローバル化を進めた大企業だけであり、中小企業・農家・国民にとってはほぼデメリットしかないことが簡潔に記述されている。


大企業はTPPによって関税の撤廃や商圏の拡大と言ったメリットを享受できる。
一方、中小企業はもとより国内が取引の対象であり、関税の撤廃によるメリットなど微少か皆無かのいずれかであろう。むしろ、低賃金の発展途上国とコスト競争を迫られるデメリットの方が大きすぎる。そして、発展途上国並みの賃金や社会保障しか受けられなくなる労働者、公共事業すら海外に奪われ、地元の企業が衰退し自らも衰退せざるを得ない地方自治体…夢も希望もない。


日本語というのはそれだけで「非関税障壁」である。TPPに参加すれば、言語の壁を撤廃するために、日本語の資料に添えて英訳された資料も作成しなければならない場合が出てくる。それがどれだけ負担になるかは想像に難くない。TPPの日本語訳が存在しないという現状を顧みて、まさにブラックジョークとしか言いようがない。


そして、よく言われる「日本は農産物の関税が高い…」であるが、これも実はミスリードである。この本で初めて知ったのだが、マスコミでよく言われる「日本は農産物の関税が高い」というのは、正確に言うと「日本は関税が高い農作物もある」であり、農産物平均関税率は諸外国に比べてむしろ低い方なのである(EU・韓国・タイ・インドネシア・マレーシア・アルゼンチン・ノルウェー・スイスetcよりも低い)。むしろ無駄に関税を低くしすぎて、ごく一部の農産物以外が壊滅したとも言える。この上、さらに残された一部の農産物まで壊滅させようと言うのか。


「TPPが日本を壊す」ことが実感できる本です。我々一般人がTPPを語る上での入門書として是非ご一読を。