TPP亡国論

TPP亡国論 (集英社新書)

TPP亡国論 (集英社新書)

フジテレビの「とくダネ!」に、コメンテーターとして出演した際のブチ切れた態度がネット上で評判になった、中野剛志氏の著書。


主題は当然TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)なのだが、それだけに留まらず、現在の世界情勢などにも触れられている。


TPPへの参加意義に「アジア太平洋地域の成長を取り込む」とあるが、そもそもアジア太平洋地域での重要なプレイヤーである中国・インド・韓国のいずれもがTPPには参加しない。つまり、TPPに参加してもアジア太平洋の成長を取り込むことなど出来ない。


また、東アジアが成長著しい事は間違いないが、東アジアが成長したのは内需が拡大したわけではなく、アメリカやヨーロッパへの輸出が拡大したからである。アメリカやヨーロッパが不況に陥り購買力を失えば、東アジア諸国の景気も低迷し、「成長を取り込む」どころではない。中国を始めとした外需依存度の高い国々の市場など、もともと大したうまみはないのだ。


今本当に必要なのは、東アジア諸国内需拡大と、もともと非常に大きな数字を持っている日本の内需の活性化である。その施策としてTPPは全く必要無い。


また、自由貿易が貿易額を拡大させ経済成長を促すというのも嘘なのだとか。保護主義的な措置をとった国の方が内需を保護出来た結果、購買力が増して貿易額を拡大させたからだと。


中野氏は、幕末における幕府の外交方針や、さらには自主防衛にまで記述する。中野氏の問い掛けは、もはやTPPだけではなく日本という国の在り方にまで渡る。


サラリーマンが酒場での口プロレス用に読むのなら、10月17日に紹介した「TPPが日本を壊す」の方が良いかも。但し、こちらも充分読み応え有りなので、併せて読まれる事をお薦めします。