震災キャラバン

震災キャラバン (集英社文庫)

震災キャラバン (集英社文庫)

トホホ映画「ミッドナイトイーグル」の原作者が、3.11後に書き下ろした小説。ちなみに映画「ミッドナイトイーグル」は途方もない改悪をされており、著者に対する同情を禁じ得ない…


自称プロのジャズバンドマン兼、実家の食堂でアルバイトをする青年が主人公。実家は神戸であり、阪神淡路大震災で被災をして、祖父と妹を亡くしている。


バンドの練習後に実家の食堂に戻った彼は、テレビに映った光景を目の当たりにする。それは、東日本大震災の際に発生した津波が、町を飲み込んでいく風景だった。


東北から大学進学の為に神戸に出てきて、食堂でアルバイトしている少女の家族を捜すため、主人公の青年、謎の中年男性、そして途中で無理矢理同行することになった自称ジャーナリストの男が、支援物資を積載したワゴン車で被災地を目指すのであった…


震災直後の混乱や、被災地での模様など、それなりに書けていると思う。しかし、今の時代はネットでさまざまな情報を得ることが出来、それをテキストのみで凌駕するのは相当の筆力を要するだろう。残念ながら、この本からは、ネットで得た情報の生々しさを越えるような迫力を感じることは出来なかった。


先の震災では、本当に、本当に多くの人が不幸になった。不幸に遭遇して、それでも生きていこうとする人を描いてこそ、現実に不幸な目にあっている人達を励ませたのではないだろうか。そういった意味で、この小説のオチはこれで良かったのだろうか?と思ってしまう。


この小説を映画化するのなら、原作を一部改変して欲しいと思ったのだった。