テロルの地平

テロルの地平 (光文社文庫)

テロルの地平 (光文社文庫)

鳴海章氏の書き下ろしで、2009年11月25日付で刊行され、2011年春に文庫化予定…だったのが、”諸般の事情を踏まえ”2011年11月での文庫化となった。


青森に存在するという巨大な逆断層”眠れる龍(スリーピング・ドラゴン)”。そこに核爆弾を仕掛け、爆発させることによって日本列島に巨大地震を起こし、六ヶ首村(まあ、六ヶ所村の事ですよね)の核燃料リサイクル工場を始めとする日本各地の原発施設を破壊するべくテロリストが動き出した。他方ではテロリストによるカーフェリー乗っ取り作戦も発生し、乗客を救出すべく警視庁と自衛隊が動き出す…


カーフェリーを乗っ取ったテロリスト集団は核爆弾によるテロを仄めかす。それに対し、F-2によるカーフェリーの撃沈をも辞さない自衛隊。カーフェリーの乗客は救えるのか。そして、後手後手に回った、”眠れる龍”を狙うテロリストの捜査は…


正直「えっ?」となってしまう、衝撃的な結末。
この手の小説だと、主人公側の大活躍により、すんでの所で危機を回避する(村上龍氏の「半島を出よ」がそうでした)のがセオリーだ。しかし、今作品において鳴海氏は、ある意味予定調和とも言えるスイートな結末を描かなかった。確かに、この内容で震災後すぐ文庫化するのは無理がある。そして…もう何年か待ったなら、それはそれで文庫化が無理だったかも知れない。この本で描かれた”その後”が、現実のものになっているかも知れないのだ。


地震大国ニッポンにあって、今だ原発利権に群がるダニ共。こいつらは、そして我々日本人は、この「成就した予言書」をどう読むのだろうか。第2・第3の予言が成就しなければ、考えを改める事が無いのだろうか。


鳴海氏の作品だけあって、空自のF-2や警視庁の特殊部隊などの描写もばっちり。しかし、オチが重すぎて、単純なアクション小説として楽しむにはちょっと…。ただ、それでも今こそ読むべき本だと思います。