トスカの接吻オペラ・ミステリオーザ

以前紹介した「エコール･ド･パリ殺人事件レザルティスト･モウディ」と同じく、深水黎一郎氏の著作。

オペラ「トスカ」の劇中で、ヒロインのトスカが悪役のスカルピアを刺殺する。本来なら、刃が引っ込み偽の血糊が噴き出す仕組みになっているダミーのナイフが、何と本物のナイフとすり替えられており、スカルピア役を演じていたオペラ歌手が死亡してしまう。

誰がダミーのナイフを本物とすり替えたのか？動機も、犯行の方法も分からないまま、捜査が進んでいく…

正直、トリックも動機もかなり苦しい感じ。及第点ぎりぎりには達していると思うが、さして素晴らしい出来とは思えない。
この小説の読み所は、オペラ劇場の関係者に対する聞き込みを通じて知ることが出来る、オペラという芸術の様々な側面や係わる人達の思い、そして”芸術”の業の深さではないだろうか。

ミステリーとして読むとさほどでもないが、一般人にオペラという芸術の裏側を垣間見せてくれる読み物としては悪くないのでは。よろしければご一読を。