君が衛生兵(ナース)で歩兵が俺で

君が衛生兵で歩兵が俺で (スマッシュ文庫)

君が衛生兵で歩兵が俺で (スマッシュ文庫)

「世界一ヘビーな学園ライトノベル!」


現役予備自衛官が執筆!!したのが売りというラノベ。タイトルを見て港のソフトがどうとか連想した人は、心が汚れている人です。もちろん、私も汚れています。


陸上自衛隊武山高校普通科に通う男子高校生が主人公。衛生科に所属する学園一の美少女や、元自衛官の美人防衛大臣などと関わり合い、やがて自衛隊によるクーデターに巻き込まれていくことになる…


1巻で完結なのだが、限られた枚数の中でクーデターまで突き進んでしまうので、唐突な感じが否めない。美人防衛大臣や学園一の美少女についても描写が足らず、感情移入が終わる前に物語が終わってしまう。2〜3巻でじっくりと書き込めば、もっと面白い話になったと思うが…


それから、美人防衛大臣の思想が極右すぎて笑った。いくらなんでもそりゃないでしょと言いたくなる発言の数々。作者が美人防衛大臣(に象徴される憲法第九条改正論者)をキ○ガイとして描きたかったのなら、それは幾ばくか成功しているとは言えるが…。
正しいのに(もしくは正しいと感じさせてくれるのに)敗北してしまう。それを見た読者達は、現実の無情さにむなしさを感じながら、それでも正しくありたいと自らを奮い立たせる。
間違った(もしくは間違っているように見える)主張を持った存在が敗北していくのを見た読者達はカタルシスを感じることが出来るだろう。しかし、その間違っている風の主張を持った存在が味方側だったら…?読者はどんな気持ちでそれを読めばいいのか。


所々に挿入されるヲタクネタも上滑りしている印象。クーデターというヘビーな題材をライトなノベルで(しかもたった1巻で!)取り上げるというのはやはり無理があるのだろう。ライトなノベルにはライトな題材こそが相応しい。どうしても1巻で終わらせたかったのなら、自衛隊がらみのボーイ・ミーツ・ガールストーリーに徹した方が良かったと思う。


個人的には憲法第九条の改正より現実的なROE(交戦規定)の確立が先決だと思う。専守防衛を是とすることと、役人的硬直思考には本来関連性が無いはずなのに、それらがおかしな形で結びついているのが現状だと思うのだ。


若い人達が憲法第九条問題に触れるきっかけ…がこの本で良いのかな〜?軍ヲタと萌えヲタの二重苦を抱えて生きる駄目紳士の端くれである私にしても、この本を誰に薦めたら良いのか思いつかないのでした…