戦雲の果てで−語られざる人と飛行機

戦雲の果てで―語られざる人と飛行機 (光人社NF文庫)

戦雲の果てで―語られざる人と飛行機 (光人社NF文庫)

渡辺洋二氏の新刊。旧日本陸海軍の航空に携わった将兵に関する、様々なエピソードが綴られている。


・筑波隊残像
筑波航空隊から送り出された特攻部隊・筑波隊。不愉快なのは、兵学校出身の士官は特攻に廻されず、予備士官達を特攻要員に充てたことである。兵学校出身者こそが本流であり、その他は踏みにじられるべき傍流だとでも言うのだろうか。こんなカス共が軍の中心にいたのだから、先の戦争は負けるべくして負けたと言わざるを得ない。


・吹雪と濃霧と航空戦
太平洋戦争の戦局を語る上で、ほとんど意味がなかったアリューシャン列島での戦い。敵からの攻撃よりなお苛烈な自然の猛威が、日本の将兵に襲いかかる。


・苦い改造
とにかく高々度が苦手な日本の戦闘機。それなら、軽量で快速な偵察機武装をしてみたら…と作られたのが、百式司偵を改修した武装司偵である。確かに速度は速いものの、軽量で脆弱な機体構造故に速度を得ることが出来た機体を戦闘に使えば何が起こるか、誰も理解していなかったのか、それとも理解した上で戦場に送り出したのか…


・超高空への技術戦
ドイツが高々度偵察・爆撃機を造り、イギリスがスピットファイアを改造して邀撃する。その高度は仕舞いには1万3千メートルにもなるが、ついにドイツが諦める。
一方、日本機は高度1万メートルでアップアップになり、仕舞いには体当たりを始めるのであった…


・あとがき
本作品で何気に一番感動的な章。著者の父親と、著者の奥様の父親が敗戦後にそれぞれ辿った運命について描かれている。


機材よりも人にスポットを当てたエピソードが多く描かれている。当時の人々の生き様に思いを馳せたい人は是非。