会計不正 会社の「常識」監査人の「論理」

会計不正―会社の「常識」 監査人の「論理」 (日経ビジネス人文庫)

会計不正―会社の「常識」 監査人の「論理」 (日経ビジネス人文庫)

監査人の立場から、粉飾決算等の会計不正について語る本。


テクニック的な事はさておき、組織に対しても多くの記述がある。


会計不正の背後には得てして悪い企業文化が潜んでいることがあるが、それをを作るのは経営者の日常の発言であり行動であるという。指導的立場の人間が無知無責任な発言をしたり納得出来ない行動をすれば、それを見た部下達が悪影響を受け、組織自体が歪んだものになって行く。


そして、公平性や公正性の問題。誠実で実績のある人は評価されて当然だが、誠実だが実績の伴わない人はどう評価するのか。さらには、誠実ではないが実績のある人を評価しても良いのか。組織の中には縁の下の力持ち的な仕事をする人もいる。そういった人間も含めて観察・評価出来ない人間は上に立つべきではないのだが、えてして華やかな仕事をする人間だけが出世する傾向がある。そういった組織は見た目だけは立派でも内部はグズグズの腐った組織になってしまう。


他には、充分な監査を行う事を難しくしている監査法人のリソース不足、官公庁の力不足、そして一般に対する会計教育の必要が説かれている。株式投資などはゼロサムゲームであり、誰かが儲けていれば必ず誰かが損するのだ。そして損するのは大抵半可通の素人である。企業は株式投資などに関わらず、実業を全うすべし。


正直、読者を選ぶ本。公認会計士公認会計士事務所に勤める人、上場企業の経営者や会計部門に勤める人以外にはあまり必要が無いかも。