ゼロの血統 零戦の天使

ゼロの血統: 零戦の天使 (徳間文庫)

ゼロの血統: 零戦の天使 (徳間文庫)

※注意 この小説に零戦は全く出てきません。出てくるのは開発中の「十二試艦戦」としてのみです。


スクランブル」シリーズの夏見正隆氏による新刊。「スクランブル」シリーズに出てくる天才女性パイロット鏡黒羽の祖父、龍之介の活躍が描かれている。


1937年、機種転換訓練中の鏡龍之介二飛曹は、他の訓練生2人と共に、突然実戦部隊に配備される事になった。中国戦線において被害が増大する九六式陸攻の護衛を務める為である。
新しい配属先の大村基地に移動する際、深作大尉操る九六式艦戦に不意打ちされる龍之介達。不意打ちに対応しきれなかった訓練生2人をにべもなく返そうとする深作大尉。そんな大尉に対し、龍之介は模擬空戦を挑むのだった。


そして、龍之介のあずかり知らぬところで様々な陰謀が巡らされる。アメリカ人に日本人への恐怖心を植え付けようとする中華民国、金の為に戦うフライングタイガース、ドイツの軍事顧問団、日英満同盟をつぶそうとするジャーナリスト…様々な組織や人が様々な動きを見せる。


本作では、ついに漆沢美砂生の祖父である漆沢雄一郎が登場する。登場時の階級は少尉。龍之介ほどの天賦の才は無いが、事に当たるに際して逡巡しない優秀な操縦手として描かれている。迷いが無いのは指揮官として重要な資質なので、これから龍之介の指揮官として活躍してくれる事を期待したい。


クライマックスは、ある難しい作戦を龍之介が遂行…する予定なのだが、残念ながら作戦の模様が描写される前に文が終わってしまっている。次巻「ゼロの血統 南京の空中戦艦」は2014年春に刊行予定との事。待ち遠しい!