兵士を追え

兵士を追え (小学館文庫)

兵士を追え (小学館文庫)

「兵士に聞け」「兵士を見よ」に続く、自衛隊員を題材にした「兵士」シリーズの第3弾。


陸自のレンジャー部隊やPKO派遣部隊を題材にした「兵士に聞け」、空自の戦闘機乗りや整備士を題材にした「兵士を見よ」に対し、今回の「兵士を追え」が題材としているのは海自、それも潜水艦乗組員がメインである。


撃沈即全員死亡である潜水艦。いや、平時ですら操作を誤れば真っ逆さまに海底に沈んでゆきこれまた即全員死亡という厳しい環境。それだけに選ばれし者のみが潜水艦乗組員になる事が出来る。パイロットがその証として身につけるウイングマークは知っていたが、潜水艦乗りの証ドルフィンマークは初めて知った。我ながら、興味の対象が空に偏っていると再認識する。あと、海自における潜水艦の定数って16隻だったのね…四方を海に囲まれている日本にしては少ないような気がする。


潜水艦が身を潜めるには、海中の水温や塩分濃度が重要になる。それらのデータを集め、海図を作成することでその海域での潜水艦による活動が容易になるのだが、最近は中国がその作業を日本近海で行っている。よく資源や領土問題として取り上げられる中国の海洋調査船活動であるが、他にそういった側面もあるのだとか。潜水艦の活動が制限されるようになれば、日本近海における海上自衛隊の影響力は大きく減退する事は間違いない。由々しき問題だと思うのだが…


潜水艦乗りに多くのページが割かれているが、サブマリンハンターたる対潜哨戒機P-3Cの任務についても述べられている。不審船に対し威嚇爆撃をしたエピソードや、近年重要度を増している洋上艦艇の監視任務、もちろん元々の任務だった対潜哨戒訓練等が取り上げられている。P-3Cは潜水艦と違って買いも買ったり110機を保有している。海岸線が長い日本で、潜水艦を追い、洋上の不審な船を追い、救難捜索任務にも充てられるとなればこのくらい数が無いとカバーしきれないだろう。


以前の自分にとっては厚木基地における"ハズレ"だったP-3C。だが、「ホーネット飛ばないなー」などといいながら、飛び立っていくP-3Cを見ている内に「いや、なかなか格好良いな」と思うようになってきた。この本を読むことでますますP-3Cが好きになれた。


潜水艦が好きな人、哨戒機P-3Cが好きな人には特にお薦めです。