いまアメリカで起きている本当のこと

いまアメリカで起きている本当のこと

いまアメリカで起きている本当のこと

日高義樹のワシントンレポート」でおなじみの日高義樹氏の最新刊。


第一章、第二章では日本の民主党政権によって揺らぎ始めた日米関係が語られる。
日米関係をぎくしゃくさせているのは普天間問題であるというのが日本人の一般的な認識だと思うが、米国にとって普天間問題とは日本政府が解決すべき国内問題でしかない。米国が日本に不信感を持つ最大の理由は、核兵器に対するスタンスが定まらない点なのだとか。イデオロギーに基づいて「核の傘など要らない」と言うのは、世界情勢を理解出来ない素人の物言いであり、その素人=民主党が政権を握っているのが現在の日本なのだ。
対共防波堤として基地を提供してきた日本と、その見返りに「核の傘」による抑止力を提供してきたアメリカ。しかし、日本の民主党は中国にすり寄り米国をないがしろにし、財界も中国市場に過大な期待を掛けている。しかし、武力という後ろ盾のない国の企業が人治国家である中国でまともな商売など出来ないことはご存じの通り。
日本が今のままアメリカ離れをしても、丸裸のまま国際社会という名の弱肉強食世界に放り出される事になってしまう。「話せば分かる」などと信じているのはお花畑の九条信者くらいであろう。
一方、アメリカのオバマ大統領は就任以来中国寄りの政策を執り、アメリカ人の嫌う社会主義的政策(社会保険等)を推し進めた結果、2010年11月の中間選挙において、民主党の敗北という形で不信任をつきつけられた。その結果、共和党=保守勢力が力を取り戻したのだが、元来日本に対して融和的だった共和党は日本の民主党を嫌っている。当然である。日本の民主党自体が「アメリカ嫌い」「脱アメリカ」を標榜しているのだから。日高氏曰く「日本の民主党の政治家達にとって、国家を守ることは絶対的な道徳ではない」。自国を守る意志を放棄した連中など、誰が信用できるだろうか。日本の民主党政権が続く限りは、日本に興味が無く中国大好きなオバマ民主党が優勢になろうと、主義や信条がまるで異なる保守共和党が優勢になろうと、日米関係が改善されるあてはない。一刻も早く民主党政権から「チェンジ!」しなければならないのが、日本の現状であろう。


第三章は、アメリカが金本位制に戻るのではないかという驚愕の内容。


第四章は、アメリカの景気先行きが暗いという事。一時的な回復はしているものの、失業率が上がっているため二番底が心配されている。小泉政権下で見られた「ジョブレスリカバリー」がアメリカでも起きているのだろうか。
日高氏は、オバマ政権下で行われた規制が景気低迷の原因だとしているが、個人的には富の再分配機能が不全になっている事の方が原因だと思う。但し、日本と米国では国民性を始めとした諸事情が異なるであろうから、何とも言えないが。


第五章ではアメリカの新しい極東戦略について。中国は沿岸に近づく米空母を撃沈する能力を持つに至ったが、遠く離れた場所にいる空母を見つけ出し攻撃する力はない。一方、アメリカは遠くから中国に打撃を与える「オフショア戦略」に移行しようとしている。驚いたのは、太平洋に空母を7隻も配備する可能性に言及されていること。これが本当なら、米国が保有する空母のほとんどが太平洋に浮かぶことになる。アメリカがいかに極東=中国対策を重視しているかが分かる。


第六章、第七章では今後の選挙において、共和党が大勝するであることを予言する。もっとも、もともと共和党シンクタンクであるハドソン研究所の言うことなので100%鵜呑みには出来ないが。


第八章では、最近話題のオイルシェールについて。この本はフクシマ以前に書かれているのだが、米国ではオイルシェールをエネルギーとして利用することにめどが付き、原発の開発にブレーキが掛かっているとの記述がある。フクシマを知ってしまった今なら、更に脱原発の動きが加速するだろう。この本に記述はないが、一説にはウラン235の方が他の化石燃料より先に枯渇するという説もあり、もはや原発には未来がないのだと知れる。


第九章ではアフガニスタン戦争について。今やベトナム戦争以上の兵力(!?)をつぎ込んでいるアフガニスタン戦争。しかし、9.11の復讐と言うにはずいぶん高く付いている戦争である。オバマ大統領にはこの戦争を終結させる能力は無いとバッサリ。
この本が書かれた後に9.11テロの首謀者と目されるオサマ・ビンラディンが米軍によって殺害され、オバマ大統領は凱歌をあげたが、これをもってアフガニスタン戦争終結への糸口が掴めた事になるのだろうか。


第十章、第十一章では中国とアメリカが軍事衝突した場合について。人民解放軍が権力を持ち始めたと観測されている中国。オバマ政権の中国に対する弱腰外交が、中国をすっかりつけあがらせてしまったが、その中国を押さえるには強い政治力を発揮する新しい大統領が必要であると日高氏は言う。今の中国には遠く離れた米空母を探し出し撃沈する能力を持たないが、オバマ政権がその技術を売り渡さない保証は無い。かつてクリントン政権が、大陸間弾道ミサイルの技術を中国に売り渡してしまったように…


あとがきは日高氏からの日本の人々に対するメッセージ。日高氏からのメッセージを真摯に受け止め、これから先如何に振る舞うかを真面目に考えることが日本国民として必要なのかもしれない。