楊令伝十二 九天の章

楊令伝 12 九天の章 (集英社文庫)

楊令伝 12 九天の章 (集英社文庫)

南宋の帝である趙構の身柄を水軍に委ねて身軽になった劉光世と、金軍を率いる兀朮(ウジュ)は一度だけ本気で交戦する。用兵では劉光世に及ばないことを自覚した兀朮は、結局は趙構を討つことが出来ぬまま帰還することになった。


金国での粘罕(ネメガ)と撻懶(ダラン)の政争は、許貫忠の助言により粘罕優勢となる。劣勢に追い込まれた撻懶だが、青蓮寺の李富と通じることによって、いつしか起死回生を計ろうと画策する。


徐絢が命懸けで手に入れた宋国開祖の系図。七代目の趙昚(ちょうしん)について、違和感を持つ呉用たちだが、それが何なのかは見当が付かない。そりゃ、李富と李師師が自分たちの子供に昚と名を付けて、ゆくゆくは帝にしようとしているなんて、普通は思いつかないだろう。


順調になってきた梁山泊の交易。もはや問題は起こらない…と安心していたら、あろうことか金国の訛里朶(オリド)が梁山泊の商隊に襲いかかる。商隊の警護に加わっていた秦容の巧みな指揮が荷を守り、王定六の命懸けの疾走で商隊の危急を知り駆け付けた楊令が訛里朶を俘虜にする。敵対関係ではない金国の訛里朶は、何故商隊を襲ったのか…


青蓮寺を探る燕青だが、罠に嵌り、李富の護衛である周炳との一騎打ちになる。一騎打ちを制したのは…


梁山泊の外にある塞である双頭山。退役を間近に控える鮑旭が隊長となって守備をしている双頭山に、元宋禁軍の張俊率いる張家軍が四万の兵を率いて襲いかかる。二千対四万という絶望的状況の中、双頭山を守るため、鮑旭最後の戦いが始まる。


楊令の築こうとしている小さな梁山泊と、天下統一を求める梁山泊の同士達。両者の思い描く「国のすがた」の違いが、問題の芽になりそうな予感である。「楊令伝」は全十五巻なわけだが、残り少ない冊数の中で両者の歩み寄りは可能なのだろうか…以外と大きな問題に変わっていきそうな気もするが。


第十三巻は6月26日発売予定。後3巻しか無いと思うと、ちょっと寂しいなぁ…