楊令伝十四 星歳の章

楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)

楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)

楊令伝もあと2巻。


”志”を胸に抱いて死んでいく梁山泊の男達。国を変えたかった、民を救いたかった…童貫、そして宋という大きな打倒目標を失ったために方法論は散り散りになってしまったが、それでも志の拠り所である”替天行道”への思いは変わらない。


”そうだ、志に生きたのだ。不器用で、失敗ばかりした。小心で、周囲の眼をいつも気にしていた。それでも、志に生きた。それを見失ったことは、一度もない。”
ある男が死んでいくときの独白である。信ずるものに殉じる男達の生き様、そして死に様が、死に時を逸してしまった者には眩しく見える。


梁山泊は趙昚(ちょうしん)が偽物で実は李富の子供であることを察知する。しかし、ただその事実を発表したところで、南宋が国として順調に運営されていれば大した問題にならない。楊令はこの切り札を燕青に託す。


一方、梁山泊と商人が画策した自由市場は斉を席巻する。限られた商人に利権を与えることで国の経済を支配している南宋にとって、それ以外の商人が自由に商売を行える自由市場は、国を運営する上で命取りになりかねない。
軍と軍との戦いではなく、経済での戦い。
交易、そして物流に基づいて国を為すという”新しい国の在り方”を実現しようとする梁山泊は、あくまでも今まで通り帝の権威の元で国を為そうとするその他の国にとって大いなる脅威となる。南宋内での自由市場を阻止すべく、南宋梁山泊との開戦を決意する。


死期が近づいた金国の帝、呉乞買(ウキマイ)。金軍の総帥となった兀朮(ウジュ)に「幻王を討て」と勅命を下す。楊令が実現しようとする新しい国の形を、金国を含めた既存の国家を否定するものとして認めまいとする呉乞買。若さ故、新しい国の形に一定の理解を示す兀朮。しかし一方で、勅命の重みも双肩にのしかかってくる。


楊令伝もあと1巻。楊令率いる梁山泊が実現しようとしている”新しい形の国”はどうなってしまうのだろうか。そして、楊令は…