スクランブル 空のタイタニック

スクランブル 空のタイタニック (徳間文庫)

スクランブル 空のタイタニック (徳間文庫)

スクランブル」シリーズ最新刊。前作「イーグル生還せよ」の帯に「超人気シリーズ堂々完結!」とか謳っていたので惜しいと思っていたのだが、続編が発売されて大変嬉しい。


久々の登場である漆沢美砂生は、何故か女子幹部レンジャー課程に放り込まれている。彼女は本来、航空自衛隊に所属するF-15Jイーグルのパイロットなのに…。


一方、F-15Jイーグルが大好きだけど戦闘機パイロットにはいまいち向いていない主人公の風谷修は、はなから航空自衛隊を馬鹿にしているロシア機が領空侵犯をしようとしても、止める手だてが無く苦悩する。しかし、二番機を務める鏡黒羽が…


レンジャー課程を無事修了した漆沢は、紆余曲折あって韓国行きのエアバスCA380(中国で生産されたA380という設定…爆発しそうだ)に乗せられてしまう。そのCA380は低価格を売り物にした新参の航空会社が初めて取得した大型機で、初の就航を迎えたのだが、飛行中にアクシデントがあり、乗客及びパイロットを含む搭乗者のほとんどが意識を失ってしまう。


訓練を行っていた風谷と鏡は、CA380の状況を確認するよう指示される。訓練を中断し、CA380の捜索を実施する風谷と鏡。


オートパイロットで飛行を続けるCA380。なんと竹島を目指し、竹島に到着するとその上空を旋回し始めたのだ。「領空(独島上空)を侵犯する機体を撃墜する」為、12機ものF-16を差し向ける韓国。CA380のオートパイロットを解除し、竹島上空から離脱させなければ800人もの乗客達の命が奪われる。しかし、竹島上空は日本の防空識別圏から外れているため、風谷達は救出に向かうことが出来ない。よしんば向かうことが出来たとしても、訓練規定によりミサイルはもちろん機関砲すら使えないようロックされている。漆沢美砂生の運命は、そしてこのアクシデントを演出した黒幕とは…


前作でほとんど主役機を務めたボーイング767と異なり、エアバスA380(CA380)はそれ自体が主人公達を苦しめる存在となる。作者はA380が好きじゃないのかな?ちなみに私は、大韓航空の所有機が成田空港でインシデントを起こしたり、客のクレームは受け付けないと豪語する某国内航空会社が運用しようとしているA380は大っ嫌いです。「飛行機自体に罪は無い」とか言われても知らんがな…


CA380の乗客達を救うために死を覚悟する風谷、風谷に対し「あなたは死なない。わたしが死なせない」と言い切る鏡、不屈の精神で最後まで諦めない漆沢ら主人公達は当然のこと、今回は思わぬ人物までが義侠心を見せる。今までの「スクランブル」シリーズ中、一番スカッとする内容に仕上がっている。


いやー、面白かった。是非次作もお願いしたい。今度は漆沢がF-15Jに乗って大暴れしてくれると嬉しいです。